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2012年9 月 4日 (火曜日)

高橋狛江市長が所信表明:財政健全化中心に随所に高橋カラー、まちづくりへ市民参加求める

120903takahashi01狛江市の高橋都彦市長は9月3日から始まった第3回定例市議会で所信表明演説を行った。7月の選挙で当選した新市長による初の所信表明とあって、市民の関心は非常に高く、市議会の傍聴席は満席となり、入れずに廊下でスピーカーを通して耳を傾ける人もいた。内容は、財政健全化に力点を置きながらも、安全・安心や子育て、福祉の充実などを盛り込み、魅力ある狛江のまちづくりのため、積極的な市民参加を求めているのが特徴。基本計画の見直しなど、従来の行政からの転換もめざしている。
第3回定例会は9月28日までの日程で、一般会計補選予算など4件、高齢者住宅管理条例など一部改正案3件、公営住宅等整備基本条例などが上程されている。

写真=所信表明を行う高橋市長

所信表明は「地方財政と狛江市の行財政運営」「まちづくりについて」「効率的・効果的な行財政運営を目指して」「安心して安全に暮らし続けられるまち−狛江を目指して」「もっと前進子育て環境の充実」「いたわりのある福祉の環境づくり」「活力ある狛江を目指して」の7項目に分かれ、基本的な考えや現状分析などを盛り込んでいる。
内容的には、選挙戦の際に力説した財政健全化への取り組みにとどまらず、魅力ある狛江のまちづくりのために積極的な市民参加を求め、市民と行政との協働の輪を広げるとしている。
主な具体的な施策としては、和泉多摩川緑地にある水道局用地問題について都との協議を再開し、利用計画を策定、通称「水道道路」と呼ばれる調布都市計画道路3・4・2号線の交通安全対策などに加え、震災対策や道路などの「安全・安心なまち」、子育てひろば事業の拡充、公立保育園の民営化の検討、安全・安心な給食の実施など「子育て環境の充実」、高齢者、障がい者の福祉、こまバスの運行計画見直しなど「福祉環境づくり」などを掲げている。
財政健全化については、官と民の役割分担など事業の担い手の精査、入札や契約制度の見直し、施策評価の推進などによって歳出を削減するとともに、国や都の補助金の活用、徴収率向上などによって歳入の確保を図り、これらを行財政改革推進計画を見直すにあたっての重要項目にするという。国民健康保険特別会計の健全化が急を要するとして、検討委員会の設置などを早急に行う。
経常収支比率が92.5%にのぼるなど硬直化している市の財政立て直しは待ったなしの状況にあるとして、今議会に上程する補正予算で臨時財政対策債の抑制を図ることにより、当初予算で24年度末に増額となる見込みだった地方債残高を、予算ベースでは若干の増額となるものの、決算では契約による事業費の減額などもあり、23年度末よりも減額できると見込むなど、財政立て直しに取り組む姿勢を明らかにした。
さらに、基本計画の見直しを、行政の継続性に配慮して第3次基本構想を尊重しながら、基本計画、行財政改革大綱などの計画の見直しを進めると表明。このうち、基本計画については、ダイナミックな発想による選択と集中を進め、重点プロジェクトを設定するなどの見直しをスピード感を持って今年度中に行い、平成25年度を開始年度とするプランを作底するとしている。
財政立て直しを図りながら、新しいまちづくりを始めるにあたって、市まちづくり条例の精神とは裏腹に、現状では市民と行政が協調しているとは必ずしも言えないとして、行政も反省すべきは反省し、狛江を、住んでいる人には快適でふるさととして誇れるまちに、訪れる人には魅力あふれるまちにしていくと目標を掲げた。そのために、市民にできるだけ早期の情報提供を心がけ、要望に謙虚に耳を傾け、揺るぎない信頼関係を築くことでまちづくりを進めるとしている。

所信表明(全文)

【地方財政と狛江市の行財政運営】

内閣府が8月に発表した月例経済報告では、「先行きについては、当面、世界景気の減速の影響を受けるものの、復興需要等を背景に、景気回復の動きが続くと期待される。ただし、欧州政府債務危機を巡る不確実'性が依然として高いなかで、世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動が、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、電力供給の制約、デフレの影響等にも注意が必要である。」とされています。東日本大震災からの復興はもとより、長引くデフレ不況からの脱却や歴史的な円高への対応など直面する課題を受けてわが国の公債残高は24年度末で709兆円程度が見込まれており、毎年度、増加している状況にあります。
このような中、8月10日には社会保障と税の一体改革関連法案が参議院で可決・成立しましたが、社会保障費の増加や消費税増税が地方財政にどのような影響があるのか、情報収集に努め市財政への影響を検討する必要がありますが、国財政が厳しい現状からも、地方財政についても楽観することはできません。一方で地域のことは地域で決めるという地域主権改革の推進により地方自治体事務は増大していることもあり、地方自治体への財政的マイナスの影響は、今後も大きくなるのではないかと予測されるところです。
狛江市の平成23年度決算では、経常収支比率が92.5%と1.4ポイント悪化し、速報値ですが26市で10位から15位と順位を下げました。また、臨時財政対策債を分母に加えない数値では101.6%と、依然として100%を超えている状況です。公債費関連の比率も改善はしてきているものの、依然として高い数値となっています。現在、第4次行財政改革大綱・推進計画の見直し作業に取りかかりましたが、硬直化している狛江市の財政の建て直しは待ったなしの状況です。
まず手始めに本定例会に補正予算をお願いしていますが、余計な借金を増やさないため、臨時財政対策債の発行抑制を図りました。当初予算では、24年度末の地方債残高が23年度末より増額となる見込みでしたが、臨時財政対策債の発行を抑制することにより、予算ベースでは若干の増額となりますが、契約による事業費の減額もあり、決算では23年度末よりも地方債残高を減額できると見込んでおります。市財政の建て直しを図りながら、新しいまちづくりをはじめてまいります。

【まちづくりについて】

これまで狛江市まちづくり条例に謡われている精神どおり、市民と行政が協働しまちづくりを行ってきたかというと、必ずしもそうではなかった面がありました。行政としても反省すべきは反省し、今後この狛江を、すでに住んでいる人にとっては'快適でふるさととして誇れるまちに、そして他から訪れる人にとっては魅力溢れるまちとしていくために、市民の皆さんへは、できるだけ早期の情報提供を心がけ、その要望に謙虚に耳を傾け、ゆるぎない信頼関係の下にまちづくりを進めていきます。
昭和17年に都市計画緑地として都市計画決定した和泉多摩川緑地における長年の懸案事項であった水道局用地問題について、東京都との協議を再開し、市民の皆さんのご意見を集約しながら利用計画をとりまとめてまいります。
和泉多摩川緑地に関する計画を具体化するためには、正確な現状把握が必要不可欠と考え、本定例会では、和泉多摩川緑地指定区域内の詳細な土地利用現況調査にかかる経費の補正予算を計上いたします。
その際、整備計画策定の基本となる総合土地利用現況図を作成することと併せて、整備の具体的な中・長期展望を多角的に検討するとともに、都市計画緑地の範囲の再検討や、市全体の都市公園整備方針の整理、また東京都の公園整備との調整及び防災機能確保との整合'性を図っていく必要があると考えております。
さらに、この公約の実行に必要な組織体制と計画策定についても整理してまいります。
次に通称「水道道路」と呼ばれている調布都市計画道路3・4・2号線の交通安全対策について地域からの強い要望に応えていくためには、東京都や調布警察署及び狛江市が相互に連携して、柔軟に対応していく必要があります。そのため、現状の交通安全対策に必要な措置について、具体的かつ早期に着手するよう関係機関と協議を開始しており、具体的な対策の実現にむけて取り組んでまいります。

【効率的・効果的な行財政運営を目指して】

次に財政についてです。硬直化している財政を建て直すため、官と民の役害分担など事業の担い手の精査、入札制度や契約制度のあり方の見直し、施策評価等の推進などにより歳出の削減に取り組みます。また、歳入においては、国や都からの補助金の活用、徴収率向上の取組みなどによる歳入確保を図ります。これらの取組みは、行財政改革推進計画の見直しにおいて重要項目としてまいります。
特別会計の健全化については、計画を策定すると公約で申し上げましたが、国民健康保険特別会計においては、急を要すると判断し、検討委員会の設置等早急に検討し、健全化に向けた取組みを行います。
次に基本計画の見直しです。狛江市民の皆様の負託に応え、私が今後の市政運営を担当しますが、行政の継続性は必要であり、第3次基本構想は尊重しつつ基本計画・行財政改革大綱をはじめとする各種計画の見直しを進めます。見直しに際しては、将来都市像として「私たちがつくる水と緑のまち」を掲げている第3次基本構想の理念を実現するため、市が果たすべき役割(使命)とその使命を果たすにあたり、投入する財源、人材といった資源を効果的に活用するための方針(戦略)を明確にした行政計画と位置付けます。
使命と戦略を明確にするため、ダイナミックな発想による選択と集中を進め、「重点プロジェクト」を設定してまいります。
計画はスピード感をもって今年度中に見直し作業を進め、平成25年度を開始年度とするプランを策定します。
この新たなプランとともに、限られた財源を有効に活用するため、公共施設再編方針に誼われている公共施設の役割、必要性についてあらためて検討を行い、11月頃を目途に新しい方針を策定します。
また、事業効果を高めること、さらに効率化のためにも、広域的な行政連携は、さまざまなメリットが期待でき、積極的な取組みが市の利益を増進するものと考えています。
多摩地域をはじめとする各自治体などと連携できる事業を洗い出し、連携を推進してまいります。
入札制度につきましては、さらなる透明性・公平性を確保するため、現在試行している工事希望型指名競争入札制度の拡充等、制度の見直しに努めてまいります。
市民参加や市民協働による取組みは、まちづくりのベースとなるものであり、また必要不可欠なものと考えております。
これまでの市民参加と市民協働については、広く市民を対象としているものの、実際に参加し、協働してきたのは、まだまだ限られた市民の方々であり、活性化にむけた環境づくりが必要であると実感しています。
基本条例施行から10年目を迎えるにあたり、今後より多くの市民参加を促し、市と市民との協働の輪を広げていくためには、市民の皆さんにこれまで以上に「狛江市」に関心を持っていただき、積極的に狛江市の魅力を高めていただくことが必要だと考えています。
そのため、これまでの市民参加と市民協働の到達点も踏まえて、「狛江市の市民参加と市民協働の推進に関する基本条例」を一部改正し、市民参加と市民協働を発展させるための士台を整えるとともに、これまで以上に市役所と市民との接点を広げ、より多くの市民の皆さんの声が市政に反映できるよう取り組んでまいります。
限られた人材でよりよい市民サービスを提供していくためには、職員自身がやりがいと誇りと使命感を持って、職務に取り組むことが重要です。
そのために、職員提案制度を始め、コミュニケーションの活性化を図り、「褒めて認める」組織風土を醸成し、職員のモチベーションの向上を図り、より高い市民サービスを目指す人事制度改革を行います。

【安心して安全に暮らし続けられるまち-狛江を目指して】

「狛江市安心で安全なまちづくり基本条例」をベースに市民の皆さんが、安心して安全に暮らし続けられるまち-狛江の実現を目指して防災、防犯、交通安全などへの環境整備を推進します。
自主防災組織の自助活動に対して、市が後方支援を行い後方支援を通じて自主防災組織や地域住民との連携を深め、自助・共助・公助の役割や責任を明確にすることで、円滑な災害対応を目指します。
そして、大震災など、甚大な被害が広範に及ぶ災害が発生した場合、市内での迅速な応急・復旧対応にあたることはもちろんですが、行政区域にとらわれない対応、特に隣接する自治体と連携・協力しての対応は不可欠であると考えます。こうした点をふまえ、隣接自治体との広域連携計訓練訓練等を実施し、災害時の態勢、対応方法、課題等をお互いに共有しながら、行政境界における役割や連携態勢等を整理し、迅速で効率的な災害対応を目指します。また、訓練等を通じた地域住民や行政職員、関係機関のお互いの顔が見える関係の構築も期待できます。実施に向けて、今後先方と協議を行いながら段階的に進めてまいります。

また、誰もが安心して安全に通行できる道路とするため道路点検調査結果に基づき、道路修繕計画を策定して、計画的に舗装工事を進めていき、歩きにくい凹凸道路を平らにして、歩きやすい道路にします。
東日本大震災発生後の市内の放射線量に対して、空間放射線量については、現在までに公共施設約130施設の測定を行うとともに、国の走行サーベイを用いた道路の測定にも参加しましたが、対応が必要となるような数値は出ておりません。また、一般財団法人電力中央研究所の協力で毎月定点測定を行っており、緩やかながら平常時の数値に近づいてきていることが確認できています。問題が生じた場合は、必要に応じて国のガイドラインに沿った早急な対応をとってまいります。

【もっと前進 子育て環境の充実】

親の子育ての不安、悩みなどを相談できる「子育てひろば事業」を拡充し、子育てしやすい環境づくりを進めてまいります。さらに、幼保一体化をはじめとする「子ども・子育て新システム」について、国の動向を注視しながら適切に対応するとともに、その受け皿として、さらには保育サービスの充実と効率'性の両面から公立保育園の民営化の検討も進めてまいります。
また、東野川学童の過員解消のため、北部地域における学童クラブの選択肢を設けるために、第五小学校内に放課後クラブを設置します。
保育園における乳幼児の健やかな保育のために、今後とも、安全・安心な給食を実施するために、毎日納入されるすべての食材について、産地の確認と表示を継続するとともに、新たな調達先の拡大にも努めてまいります。学校給食における食材についても、東京都教育庁の安全・安心のための学校給食環境整備事業に参加し、調理前の食材の線量の測定、公開をしていきます。また、食材の産地公表は引き続き行っていくとともに市の放射線への取組み状況や放射線に関する基本的な情報についても関係機関と連携し提供してまいります。
学校教育においては、情報機器の整備・活用により、理解度の向上に資するとともにすべての子どもたちが積極的にカリキュラムに取り組める環境を整えてまいります。
給食センター建設については、狛江市給食センター施設整備基本計画を基に市民説明会を行い、施設等のあり方を決定したうえで、スケジュールを進めてまいります。

【いたわりのある福祉の環境づくり】

特別養護老人ホームや新たに小規模多機能居宅介護施設等を整備し、お年寄りが安心して暮らせる環境を整え、集いの場としても活用を進めます。
平成23年度の災害時支援情報名簿のデータベース化に伴い、支援組織や各地域での要援護者の避難支援に際し、名簿を活用した避難体制の構築の検討を行います。
また、平成24年10月1日施行の障害者虐待防止法に基づき、虐待の通報等を受ける虐待防止センターを福祉保健部福祉サービス支援室に設置します。
市内を移動する手段の一つである「こまバス」については、運行開始当初と比較して、利用状況は増加傾向にありますが、平成23年度は調布都市計画道路3・4・4号線の市道4号線から泉龍寺裏までの区間が開通し、年内には田中橋交差点から狛江高校に沿って世田谷通りにつながる調布都市計画道路3・4・17号線が開通予定であり、また平成26年度には調布都市計画道路3・4・16号線の一部である通称「七差路」と呼ばれている交差点の整備など、市内交通環境は大きく変化している実態があります。
このため、これまで運行してきた経過や課題を整理した上で、これからの交通環境の変化を考慮して、今後の運行計画を再検討していく時期であると考えています。
本定例会では、バス停毎の乗降客数や利用ニーズを把握するためのアンケー卜調査を実施するための補正予算を計上し、その調査結果と市内の交通環境の変化を検証した上で、今後の運行計画を作り上げていきたいと考えております。

【活力ある狛江を目指して】

商工業分野では、市内の商工業者が新たな商品を研究・開発するための研究・開発資金補助制度や研究・開発資金の無利子での融資あっ旋を検討し、新たな市場開拓の活性化を促します。
農業振興については、エコファーマー制度、東京都特別栽培農産物制度、GAP制度のいずれかの制度を採用して生産した市内の農産物を「狛江ブランド野菜」として認定し、狛江ブランドの確立を図り、レストラン等新たな販路の拡大に努めてまいります。
まちの魅力として取組みが進められている音楽の街や絵手紙事業と多摩川いかだレース、多摩川流域郷士芸能フェスティバルについて、総合的に市政とのかかわりを整理し、今後の事業展開を検討してまいります。
市民の皆さん誰もが、手軽に地域でスポーツを楽しみ、生きがいを見出すことで、まちの魅力度アップに寄与すると同時に、結果的に健康増進にもつながるものとして、地域スポーツ振興に取り組んでまいります。
都心からも近く、多摩川をはじめとした自然や歴史遺産も豊かな狛江が、さらに輝きを増し、より暮らしやすくなるようまちづくりを進めてまいります。


2012-09-04 in 06)政治, 10)社会, 11)まちづくり, a) 狛江市のニュース | Permalink

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