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2008年1 月30日 (水曜日)
狛江市の慈恵第三病院で、俳優座有志がボランティアでミュージカル公演
療養生活に笑いとうるおいを——狛江市和泉本町の東京慈恵会医科大学附属大三病院(坂田春男院長)で1月12日、俳優座有志によるミュージカルの出前公演が初めて催され、約180人の患者や医師、看護師が、舞台やテレビで活躍する俳優さんのコミカルな演技を楽しんだ。
写真=病院の食堂で演技する俳優座の有志メンバー(舞台中央が美苗さん)
公演は、2004年4月にガンで亡くなった俳優座・中谷一郎さんの妻で同劇団の女優・美苗さんが企画。美苗さんは、中谷さんの闘病生活に付き添い、長い間支えてきたが、夫の死を受け入れられない状態が続いた経験を持つ。そうした気持ちが落ち着いた2007年、ひとりで正月を過ごしていた時、単調な入院生活に変化とうるおいを与えることができればと夫婦で話したことを思い出し、病いで伏せっている人に楽しんでもらえることをしようと病院でのボランティア出前公演を思いついた。劇団の総会にかけて合意を得て、劇団員によびかけたところ、多くの賛同を得たという。さっそく東京都のボランティアセンターに出向き、平成19年度ボランティア・市民活動支援総合基金「ゆめ応援ファンド」の助成を得て、同病院など都内3カ所で行った。
演じた作品は、美苗さんが書き下ろした「次郎ちょろ兵衛世直し旅」。中谷さんはテレビドラマ「水戸黄門」の「風車の弥七」役に長く出演していたことにちなんで、やくざ稼業の一家を解散して水戸黄門に扮して世直し旅に出るという内容となっている。美苗さんが座長になって11月後半からを1カ月半がかりでけいこを続けてきた。
今回の公演は、美苗さんの弟の中村敬さんが第三病院の副院長を務めている関係もあり、公演先として同病院が選ばれて実現。この日は、演出、照明、大道具などのスタッフ・キャスト15人が訪問。午後から臨時の舞台となった食堂に照明機材を運んだり、床にテープを張って舞台の準備をし、リハーサルなしのぶっつけ本番で公演。
会場には、車イスに乗ったり、点滴をしたりした患者さんや付き添いの医師、看護師が続々と来て超満員。坂井春男院長の「多少血圧が上がっても医者がそばにいるから大丈夫。たっぷりと笑って楽しんでください」というあいさつに続いて、俳優7人が、水戸黄門を題材に最近の世相を織り込んだ約1時間のミュージカルを上演。黄門様役の美苗さんら俳優が迫真の殺陣やユーモラスな演技を披露すると、会場を埋めた患者さんたちは笑ったり、盛んな拍手を贈り、病気を忘れて楽しんでいた。終了後には、病院側から美苗さんにお礼に花束と感謝状が贈られ(写真・右下)、会場から盛んな拍手が起きていた。
9カ月間入院しているという患者さんは「生の演劇がすぐそばで見られ、殺陣などすごく迫力があって楽しかった。ぜひ、またやってほしい」と喜んでいた。スタッフに付き添ってきた同劇団の俳優の加藤剛さんも舞台中央に進んで「今回私は出演しなかったが、息子の頼三四郎が『小股の切れ上がった個小々政』役などで出ていました。みなさん1日も早くよくなって今度は舞台を見に来てください」と励ました。
美苗さんは「夫を亡くした悲しみでしばらく落ち込んでいたが、若い団員らが『ぜひ出演したい』と熱心にけいこし、スタッフなど多くの人の協力で実現でき、私自身が立ち直れました。これからは、劇団内にボランティア公演ができる組織を作ることも検討して、是非続けていきたい」と喜んでいた。
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