親切なホームレス

10日ほど前、夕方から開く花の撮影に多摩川に出かけた。
「はしり梅雨」で雨天が続き、撮影が伸び伸びになっていたが、その日はちょうど午後から大量のにわか雨が降り、夕方には薄日が差し込んだだめもう大丈夫と判断したが、河原に着いた時は雲行きが怪しくなってきた。

群生していると聞いていた花がなかなかみつからず、ウロウロ捜しているうちにポツポツ雨が降り出す。「アカバナユウゲショウ」というその花の習性を知らず、花の色を頼りに探し回る。夕闇も迫り、自然光で撮影できる時間も限界に近い。
多摩川に住む犬連れのホームレスの男性が雨が激しくなりそうだよ声をかけてくれたが、締め切りもせまっており、引き返せない。雨のなかでようやくツボミの状態のものを見つけ、持ち帰って花の咲くのを待ち撮影することにした。
急いでカメラを片付けていたら、先ほどの男性が「これをつかいな」とカサを差し出した。事務所まで自転車で10分たらず、何とかなると思いいったんは辞退したが「別のカサもあるから、返さなくていい」と言われ、借りることにした。
自転車を置いた所まで戻るうちに土砂降りとなり、カサを使ってもぐしょぬれ。ようやく治りかけた風邪がまたぶり返しそうだったが、一本のカサで心の中はぬくぬくだった。（ネコ）