すがすがしい季節になったと思う。秋まっさかりのこの時期は、ついつい映画を観たくなり、ついつい音楽に浸りたくなる。 美術愛好家は美術館巡りに余念がない。
私のマイブームは、邦画。
邦画はこのところ元気だ。若手から、大御所からどの監督もすばらしい。 脚本、美術、音楽と個性があふれる作品が多く満足させてくれる。
音楽は特に興味深い。効果音や情景を引き立たせるだけでなく、登場人物の沈黙の心理状態を音楽で表現する映画が多くなったと思う。たとえば、心臓の鼓動やため息、沈黙の中で訴えている心の叫び。一種類の打楽器だけを使って表現したり、無声音の中で空気だけの拍の流れを意識させ、何かの音を一つ、また一つと加えて音の擬人化をわざとねらってみたり。
コンピューター音楽で壮大な立体感のある旋律を組み立て映画の中の映像よりさらに壮大な映像を想像させてみたり、凝った趣向が観られる。
この音楽が私にとってはストーリーの展開より興味があり、おもしろくてたまらない。 恥ずかしいことに、レデイーらしからぬ態度で「うーん。すごい」と座席にのけぞってうなり声をだしてしまうこともあった。
音楽の効果は不思議だ。どんなに役者がうまく、ストーリーも最高におもしろくても選択された音色の変化や音色の使い方で人の心は感動に導かれるか、つまんないと思うか……に分かれる。
それはなぜだろうと思った。
音楽には次の台詞を想像したり、情景の転換や場面の続き、登場人物の動きなどを想像させる力があるのだと気がついた。自分が想像した展開になったり、全く想像とは違った展開になったりするから、楽しめるのだとわかった。