つい最近のこと。
ミーハーな私は芸能界のビッグカップル〈マスコミの一部では格差婚と報じられていた〉結婚式中継のTVを最初から最後まで見た。
花嫁のエレガントで美しい姿にうっとり。やっぱり出てしまった「あー結婚式っていいなー。もう一度20才にもどりたーい。」という一言。横にいた娘はあれ顔。そして一言「願い事が小さいねー」でもいいのだ。私はTVに映し出されている結婚式の出席者の一人のような気分になり、ずーと夢心地の時を過ごすことができた。
「花嫁入場」というアナウンサーの声とともに流れてきたのは結婚式の定番メロデイーではなかった。私の中では結婚式のプログラムが勝手に進行していてこの場面はあの荘厳で優雅なメロデイーが流れるのだと思い込み、「♪タタタターン♪タタタターン」が頭の中で響いていた。
私の勝手な想像は完全に崩れた。「ケーキ入刀」の場面でも期待の音楽は流れなかった。ついに、結婚式定番音楽と言われるメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の結婚行進曲やワーグナーの歌劇「ローエングリーン」の婚礼の合唱曲は流れてこなかった。流れてきたのは2人の大好きな音楽や、思い出の音楽だけだった。
つい最近、私は知人の結婚式に出席する機会が数回あった。その時も結婚式定番メロデイーではなく、2人がカラオケで一緒に歌った歌や、プロポーズの時に流れていたメロデイーが会場の場を盛り上げ、ここぞという場面で流れていた。
自分たちだけのオリジナリテイーを強く出したいのだろうか。結婚式定番の音楽に頼らず、自分達でプロデユースして自分たちの記憶に強く残る結婚式にしたいのだろうか。そういえば、結婚式に限らずあらゆる分野で「定番(お決まりの型とでも言った方がわかりやすいかもしれないが)」ということばが消えつつあるような気がする。
夢見心地だった私は、一瞬我に返り、TVを一緒に見ていた娘の顔を思わず見てしまった。ウーン。やがて訪れるかも知れない娘の結婚式、我が娘の結婚式では娘と父親の大好きなボサノバが響くのだろうか?
私「あなたはボサノバの曲を自分の結婚式で流したい?」
娘「やっぱり結婚式はメンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』の結婚行進曲タタタターン。タタタターン。タタタタータッタ♪タタタタ・・♪♪♪♪・・でしょう。」
なんとなくホットした反面、私の心中は複雑だった。娘は、新時代についていける人間だろうか? いや、取り残される人間かもしれない。
私がそんなこんなを思っているなんて知らない娘は、しょんぼり考え込んでいた私を見て言った。「この世の中、自分の感性や個性を全面に出して生きればいいのよ。その時、自分に相応しくもっとも自分らしく生きる姿が現れていれば、その姿で回りは幸せなるよ。」
今日はこの一言で解決。ぐっすり眠れそうです。
written by 丸山博子