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2008年7 月 2日 (水曜日)

川崎市高津区千年の橘樹郡衙推定地に歴史公園が開園:橘小児童が研究発表を行い披露

080702gunga01 約1300年前の役所の一部と推定される遺跡が発見された川崎市高津区千年字伊勢山台に川崎市市制記念日の7月1日、貴重な歴史を保存・活用する公園がオープン。阿部孝夫市長や地元の小中学生、町会役員らが参加して、研究発表や音楽演奏で郷土の誇りとなる場所のお披露目が行われた。

080702gunga06 「たちばな古代の丘緑地」と名付けられたこの場所は、奈良時代の遺跡「橘樹郡衙(たちばなぐんが)」推定地の一部で、広さは約1650平方メートル。橘樹郡衙は、奈良時代から平安時代初頭の武蔵野国橘郡の役所で、その行政エリアは多摩川右岸下流と鶴見川下流部にはさまれた現在の川崎市域と横浜市北東部あたりと考えられている。近くには、7世紀後半に創建され、当時の郡衙と密接な関わりを持つ市内最古の寺・影向寺(ようごうじ)もあり、橘樹郡衙は川崎市役所のルーツとも言える存在だ。
080702gunga05_2 緑地が保存されたのは、1996年に宅地開発に伴い行われた「千年伊勢山台北遺跡」発掘調査から郡衙の一部と考えられる総柱式掘立柱(そうばしらしきほったてばしら)建物跡が発見されたのがきっかけ。川崎市は、古代川崎の政治や文化をさぐる重要な発見と位置づけ、郡衙の全体像を解明するため確認調査が必要として1997年から周辺の地主と協議を重ね、1998年から7年をかけ郡衙確認の発掘調査を行った。そうした最中、今回緑地として保存された場所(元・農地)が相続で国に物納された。土地の競売で開発され遺跡がなくなることを心配した地元の千年町会(木嶌士郎会長)が、市議会に同地の保存と歴史公園設置を望む陳情を1999年に提出、2年後に主旨採択された。
080702gunga02_3 緑地は、2001年と2003年に発掘調査が行われ、地表から約30〜60cm下に、当時の税金にあたるイネを入れる郡衙の正倉の柱と塀の跡などが見つかった。川崎市は歴史公園として保存するため、2006年にこの土地の約3分の2を国から買収、残りを無償で借りた。翌年、確認のため一度土を掘ってから全面に芝生を張って養生、2008年4月に市の重要史跡「千年伊勢山台官衙遺跡」に指定した。また、川境高津・川崎高津南の両ロータリークラブが川崎高津南郡衙の説明や地図を書いた高さ1.9m、幅2.7mの看板を寄贈した。
080702gunga03 午後1時30分からの記念式典は、橘中学吹奏楽部のファンファーレの演奏で阿部市長、橘小学校の児童2人と千年町会長で橘樹郡衙市制記保存会の会長でもある木嶌士郎さんら7人が解説板を除幕。阿部市長が「きょうは川崎市制記念日で、川崎市誕生して84年ですが、この場所は1300年以上前、日本の国作りが始まった初期のころの橘郡の拠点です。郡衙についてはまだ調査が必要で最終的に確定したわけではありませんが、ここを多摩丘陵から三浦丘陵まで続く緑の回廊の一部として保存利用し、全貌がはっきりしてころに記念となるものを作ることも考えています。当面は地域の人が中心となって、歴史に関係のあるイベントなどを開き、無限に広がる歴史ロマンの感じてもらえる出発点になればと願っています」とあいさつ。その後、発掘照査団の副団長の河合英夫さんが、歴史的意義と発掘調査の成果を説明した。緑地の近くの橘小学校6年4組の児童27人が、橘樹の歴史、郡衙、影向寺とかかわりなどについて授業で調べてまとめた内容を約20分にわたって交代で発表、参加者から大きな拍手が寄せられた。
フィナーレには、橘樹中学吹奏楽部の生徒37人が「君の瞳に恋している」など3曲を演奏。式典に先立ち、同小学校のお囃子クラブに所属する5、6年生の7人が祭り囃子を演奏して記念式典を盛り上げた。
080702gunga04_2 保存活動を進めてきた木嶌会長は「ほっておけば国から業者に売られ建て売り住宅になるところだったが、歴史公園として保存されてほっとしています。ここだけでなく農家の協力で畑の調査も行われ、郡衙の遺跡がたくさんでてきたことは町会のほこり」と笑顔で語った。

緑地のオープンにちなみ、会場から徒歩3分ほどの宮前区野川の影向寺も式典に協力、国重要文化財・木造薬師如来両脇侍像などの文化財を公開した。また市民ミュージアムの常設展示室では、考古学コーナーで橘樹郡衙推定地の出土品やレプリカなどを展示している。

2008-07-02 in 02)イベント・催事, 05)歴史, 09)市民活動, b) 川崎市のニュース, b3) 川崎市高津区 | Permalink

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