2005-01-08

暮らすことは生きること

暮らすことは生きることなんだ−『京都暮らしの日々』(麻生圭子著、文春文庫)を読んで、そんなことを感じた。

当たり前といえば当たり前、いまさらながらという気もするが、生きる、生き延びるために明日ばかり見て、きょうをおろそかにし過ぎていないだろうか。一期一会のきょうという日をきちんと味わわないで、あくせく明日のために働く。明日に不安を抱えているから、きょうを無駄にする。これでは、本末転倒ではないか。
東京から京都の町屋に移り住んで、その暮らしの中で感じたこと、考えたことをつづった文章の中から、しっかり地に足をつけた女性の生き様が伝わってきて、すがすがしい。
たとえ、町屋に住んでも、電子レンジやクーラーなどの家電製品を持ち込んだら、麻生さんのような感慨はつかめなかったに違いない。夏の暑さの中で汗をたらすからこそ、かすかな風を「極楽のあまり風」と感じ取れる。そうしたさまざまな季節の風と光を楽しめるようになるには、やはり「修行」がいるらしい。ただし、見落としてならないのは、そうして耐え忍ぶことを、彼女が楽しんでいることだ。読後にすがすがしいものが残るのは、そのあたりにありそうだ。

Posted by k-press on 2005-01-08 at 11:28 午後 in 書籍 | Permalink | コメント (0) | トラックバック